来季のドラゴンズについて

 どうやら来季のドラゴンズの陣容が固まりつつあるようだ。取り敢えず今オフの戦力のプラス、マイナスを見ると、※()内は育成

・退団、育成落ち

吉見一起(引退)

伊藤準規

阿知羅拓馬

石川駿

小熊凌祐

鈴木翔太(→阪神育成)

ソイロ・アルモンテ

エンニー・ロメロ

モイゼス・シエラ

ルイス・ゴンサレス

(浜田智弘)

(大藏彰人)

(サンディ・ブリトー

垣越建伸(育成再契約)

竹内龍臣(育成再契約)

合計15人(支配下枠-12)

 

・入団

高橋宏斗

森博人

土田龍空

福島章

加藤翼

三好大倫(以上ドラフト本指名)

(近藤廉)

(上田洸太郎)

松木平優太)(以上ドラフト育成指名)

ランディ・ロサリオ

マイク・ガーバー

福留孝介

(山下斐紹)

(ルーク・ワカマツ)

合計14人(支配下+9)

シーズン終了時支配下70人-退団12+入団9=現在支配下67人

 

 ・・・というわけで、育成契約の選手の数を考えても、シーズン前の補強としては支配下枠3人残しての終了の可能性が濃厚である。

 総評としては、「今後のドラゴンズの方向性がはっきりと見えた」補強であると言っていいだろう。正直ドラフトに関してはもっと即戦力重視でもよかったように思えるが、こればかりは今ドラフト指名選手が全員引退するまで評価を預けておきたい、というよしのの方針上割愛する。

 来季はいよいよ優勝を・・・というドラゴンズにとって、大野雄大の残留後最も注目すべきは外国人の補強であり、ここにこそ来季のドラゴンズの方針が見えるというものである。

 寝耳に水だったのがアルモンテの退団だ。確かに怪我による離脱の多い選手ではあったが、試合に出さえすれば3割を確実に打ち、かつ長打も期待できる打者と契約しない、というのは、打力が課題と言われて久しいドラゴンズにとって相当勇気の要る決断だったろう。しかし、ドラゴンズはアルモンテを切ってガーバーを連れてきた。お母さまを新型コロナウイルス感染症で亡くし、それでもドラゴンズのために試合に出てくれたアルモンテは間違いなく愛すべき助っ人であったが、これもプロ野球の世界では致し方ないことである。

 そしてルイス・ゴンサレスの退団もあった。現状のドラゴンズはリリーフ左腕が手薄であり、彼の今季の成績では(コロナ禍の助っ人調査の困難さも含めて)首の皮一枚つながろうかと思ったが、意外にもあっさりとその首を切ってランディ・ロサリオを獲得。昨季の圧倒的セットアッパー、ジョエリー・ロドリゲスの代わりの助っ人を来季に向けアップデートした形である。

 

 助っ人補強から窺える来季のドラゴンズのビジョンは、「守り勝つチームの完成」である。その象徴がアルモンテ→ガーバーの助っ人の入れ替えではないか。

 ガーバーの前評判を見ると、概ね「守備の上手い中距離ヒッター」である。ドラゴンズのチームとしての伝統を考えれば、年間通して安定した成績を残せることが大前提ではあるが、アルモンテほどの長打は期待できないものの、外野守備の強化には資する補強であったと言えるだろう。つまり、今季の[(アルモンテ+シエラ)/2程度の打撃+守備での貢献]を期待した補強である。これができれば、一応ガーバーの獲得が成功だったと言える。

 つまり、ドラゴンズは打撃にはある程度目を瞑ってでも、年間通して外野のレギュラーを固められる選手が欲しかった、ということになる。首脳陣によるシーズン総括に打撃面での課題を咎めるコメントが殆ど無かったこともその証左になる(得点、本塁打をはじめほとんどの打撃指標が12球団最低レベルであったにも関わらず、である)。

 その代わり、左のリリーフの獲得は迅速で、不甲斐ない結果に終わってしまったゴンサレスのアップデート要員としてロサリオを獲得した。多少荒れ球ではあるが、打てそうにもないスライダーを投じる魅力的な投手である。与田監督の最終戦後のコメントでも明らかなように、「大福丸」に次ぐ2つめの勝ちパターンの確立が、来季ドラゴンズの至上命題なのは明らかだ。

 

 元々、ドラゴンズが強い時期というのはリリーフが充実している時期とほぼ一致する。郭源治が守護神を務めた80年代、サムソン・リー宣銅烈、岩瀬で優勝した99年、その岩瀬が抑えに君臨し続け、平井、岡本、落合英、高橋聡、浅尾とセットアッパーが割拠した落合政権下などがいい例だ。今季は福、祖父江、R.マルティネス以外のリリーフが炎上する試合も目立ち、その層の薄さが露呈したとも言える。その中で、勝ちパターンを任せられるリリーフの選択肢を増やすことがドラゴンズには求められる。

 

 連続Bクラスに沈んだ近年、ドラゴンズは打線の弱さという課題に注力し続けた感がある。弱いドラゴンズに対する怨嗟の声も主には点の取れない打線の不甲斐なさに対するものであったため、ナゴヤドームという投手有利の球場を本拠地としていながらリリーフ陣の整備が遅れていることは第2、第3の問題として位置付けられてきたのではないか。

 そんな中、「大福丸」のフル回転により今年のドラゴンズはAクラスに入ることができた。この躍進に最も貢献したのは勿論彼等であろう。この様子を見て、ドラゴンズフロント、首脳陣は「最低限のリードを鉄壁の投手陣で守り抜く」勝ち方を活路として見出したように見える。ファンの目線としてはどうしても打線の貧弱さが目につき、「打てないのにガーバーみたいな中距離ヒッターを獲ってくるなんて・・・」とフロントに文句の一つでも言いたくなる気持ちは大変よく分かる。しかし、チームとしてのビジョンが、勝つための方策がようやく見出せたのである。明確な方針を打ち出し、虎の子の1点を守り抜いて優勝を目指すドラゴンズを、これまで以上に大きな声を張り上げて応援しようではないか。