みんなにもっとThe Whoを聴いてほしい(もう聴いてるならごめんなさい)。

 昨年末、ようやくThe Whoの2019年リリース『WHO』を買って聴いた。先の暮れ正月ははっきり言ってこのアルバムに塗りつぶされたようなものだった。

 

 よしのの身の回りに限った話なのかは分からないが、The Rolling StonesとかLed Zeppelinとかの良さは割と共有できている気がするものの、The Whoに関してはピンと来ない人が多い気がする(ひょっとすると知り合いの中にいる"潜在的"The Whoファンをよしのが把握できていない可能性がある)。

 

 なんとなく気持ちは分かる。誤解を恐れずにはっきり言えばThe Whoは全体的に泥臭い。メンバーを具に見ていけば、華やかなStonesやZeppelinのロックスターっぽさに比べると何となく『アパッチ野球軍』とかの香りがするのだ。

①まず、明らかにリズムを刻むどころではない異常、もといスーパー剽軽ドラマー、Keith Moon

②次に、長身を生かして負けじと腕を回したり、飛んでみたりと忙しいバンドの頭脳、Pete Townshend

③他方、棒立ちの癖に両手はやたらと動いて爆音・バカテクを奏でるJohn Entwistle

④最後に、以上の3人にかき消されないよう必死なバンドの顔、Roger Daltrey

・・・これだけ見ても他の様々なレジェンドたちと比べて随分ドンドロリンな感がある。しかしながら、The Whoを聴くだけでこれだけの人間模様が楽しめるのである。事実、よしのは初めてThe Isle of Wightの映像を観た時、一切飽きずに見入ったのを覚えている。主にPeteがハチャメチャに動くのが気になるあたりよしのもギタリストなのであろうが、とにかく何が起こるか分からないスリルが、ビジュアル的な部分だけでも、そして勿論サウンド面でもふんだんに存在する。

 

 これだけ見れば、歴史的にThe Whoが後のパンク・ロックに影響を与えた・・・みたいなUKロック史的な見方をすることも納得いくようなものであるが、よしのが好きなのは、彼らの曲のギター、及ドラム・セット破壊とかそういう過激なパフォーマンスに隠れた、そのかなり繊細な部分である。初期から彼らはやたらコーラスが綺麗だし、Peteはアコースティック・ギターがやたら上手だし、Rogerの歌も活動が深まっていくごとにどんどん上手になっているのが分かる。オリジナル・メンバーによるものではないが、よしのは前述のアルバムに付録としてついてきた、どこかでのアコースティック・セットのライブ音源が非常に気に入っている。それはそれは歯切れのいい音ではあるものの、彼らの曲そのものがそれをただ晴れがましいだけのものにせず、なんとなくアンニュイな気持ちにさせられるものになっている、そういう奇妙なバランス感がこのバンドにはある。勿論、Johnのリード・ベースと呼ぶべき質実剛健なプレイと、Keithの全編主役なドラムと、Peteの痛快なギターというアンバランスさも含めて・・・

 

 Keithが死に、Johnが誇り高き死を迎えてもThe WhoThe Whoだった。ZeppelinがBonzoの死によって終わったのとは対照的だ。勿論どちらの選択も偉大だと思う。ただ、これだけ個性的な4人で成り立っていたThe Whoがメンバーを入れ替えてでも続けることを選んだことは(別にその当時を知らない若造ではあるが)、The Whoを唯一無二のバンドにしている所以なんじゃないかと思う。『WHO』の一番好きな曲はT9. Break The Newsだった。これはPeteの弟で、現在のサポート・メンバーであるSimonの作だった。Pino Palladinoも渋くいいプレイをするし、Zak Starkeyもいい感じだと思う。確かにオリジナル・メンバーでのスリルは薄まっているかもしれないが、そんなことは無関係に困難を乗り越えて新たなThe Whoとは何かを追い求める姿が、よしのは最高にカッコいいバンドの姿だと思う。『Blue And Lonesome』でブルース・バンドであったかつてを思い出したStonesもカッコよかったが、The Whoの魅力は明らかに違うところにある。

 

 よしのはThe Whoの不器用なソツのなさが好きだ。riverside yoshinoのギタープレイは、実は大部分がPete Townshendの影響下にあることも、昨年の家に籠っていた期間の中で痛切に思い知った。The Whoをまだそんなに聴いてない人は、ちょっと聴いてみてほしい。もう既に彼らが大好きだ、という人は、是非よしのとThe Whoの話をしてほしい。I Don't Wanna Get Wiseだけど、今日ばかりは御託を並べさせてください。