ロックスター、中でもギタリストには、代名詞的な愛機が数多くある。
Keith Richardsの6弦をサドルごと外してしまったテレキャスター(MicowbarとMalcomの2本あるらしいが見分け方は分からない)とか、Jimmy PageのDragon Tele(Yardbirds〜Led Zeppelin初期まで活躍している)とか、Willie Nelsonの穴の空いたガットギター(Triggerという名前がイカす)とか、Joe Strummerのデタラメフィニッシュなテレキャスターとか、Rory Gallagherのストラト、Neil Youngのレスポール、鮎川誠のレスポールカスタム、田渕ひさ子さんのジャズマスター…と枚挙に暇がない。テレキャスターフリーク故に例示の仕方が偏っているのはご容赦いただきたいが…
そんなロックスターの愛機たちの中に、Bruce Springsteenのテレキャスターは当然入ってくると思う。アルバムBorn To Runのジャケットのアレだ。
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Tenth Avenue Freeze-Out - YouTube
ギターを弾く人なら誰しもがこんな風にギターを構えてみたい!!と思うカッコよさ、テレキャスターといえば…?の問いに彼の名を挙げる人が結構いるのも頷ける。
やっぱりBruce Springsteenはカッコいいよね、で終わってもいいが、腐ってもよしのはギタリストの端くれなので、敢えてここで問題提起をしたい。
「そうはいっても彼のギターの音、ほんとにちゃんと聞こえてる?」
Bruce Springsteen(以下Boss)がギタリストとして二流だ!とかそういうことが言いたいのではない。Prove It All Nightのギターソロなんかたまげるくらいいい音がしているのだから。
Prove It All Night (Phoenix, 78) (from Thrill Hill Vault 1976-1978) - YouTube
ライブ映像を観れば分かると思うが、あまりに暑苦しいギターソロパート以外で彼の音があんまり聞こえないのだ。耳が悪いのかもしれない。
確かにBossのE Street Bandは、ギターがサウンドの中心にいるタイプのバンドではないと思う。Phil Spectorのwall of soundがBossの好みということもあり、割と鍵盤やホーンがしっかり入っている。そのうえギタリストにはBossの相棒、というか舎弟のSteve Van Zandtがおり、そこに激渋サムピッカーNils Lofgrenまでいる。最近(といってもアルバムWrecking Ballは10年以上前の作品だ)ではそこにTom Morelloまで加わるわけなので、あくまでリードシンガーであるBossのギタリストとしての比重はあんまり重たくはないことが想像できる。 しかし、一部の曲でソロをとるとはいえBossのギタリストとしての本職はあくまでリズムギターだろう。そういった側面で印象的なプレイは全然思いつかない。
先に挙げたようなギタリストは、ロック史に残る名演をそのギターで生み出してきたからこそ、愛機であるギターとセットで記憶されるようになったはずだが、Bossに関してはそうではない。さっきのProve It All Nightが名演、名曲であることは疑いようのない事実だが、Bossの代表曲に挙げる人は多くないだろう。あれはBorn To Runのジャケットになったギターなのだ。よしのはRamonesの革ジャン!とかマーシーのバンダナ!とかと同じ括りなんだと思っている。ギターだってファッションの一部だ。
これをここまで読んでいただいた物好きなロック好きの諸君は、是非よしのにBossのギタープレイについて思うところを教えてほしい。彼のカッコいいテレキャスターをファッションの一部として片付けたくないのだ。