「ギタリストよしの」の完成形とは?

 ・・・とは言うものの、よしのはこんなに大上段に振りかぶるほどの人間ではない。ファー・イーストの、しがないアマチュアの人である。

 そもそもriverside yoshino自体どんな肩書きのものかがあまりよく分かっていないのだ。ミュージシャン、バンドマン、ブルースマン、ギタリスト、シンガー・ソングライター・・・むむむどれもしっくり来ない。「バンドをやっています」と後ろめたさなく言えるようになったのも、ミランバーズに入ってからのことだ。精々「ロック・スターごっこが趣味の人」ぐらいが丁度いい気がする。

 

 そう、よしのにとってはriverside yoshinoもミランバーズも全て「ごっこ」なのだ。幼稚園でやっていたウルトラマンごっことか、よく知らない近所の子供に混ざってやっていたおままごととかそういう部類なのだ。大学でやっていたコピー・バンドなぞもその極致で、自分で曲を書いてライブをしたり・・・というのも全部「ごっこ」遊びなのだ。例えばボブ・ディランごっこ、とか仲井戸麗市ごっこ、のようなものである。さしずめ自分の曲は、ウルトラアイのレプリカや、ウルトラ警備隊の制服のコスプレグッズといったところか。

 

 前置きは長くなったが、昨年のライブもなく暇な時期くらいから、よしのの「ごっこ遊び」は、結局のところ「誰ごっこ」なのだろう?と思うようになった。別に一人に絞る必要もないが、少なくともよしのにとって、ごっこ遊びにもある程度のイメージが必要である。色々なブルースマンロックンローラーごっこをしたいから今riverside yoshinoはこっそりライブをしているのだが、「見えたい姿」が、よしのの中では砂嵐状態であった。

 

 昨年の3月、それこそ中国で謎の疫病が現れたくらいの時期だったと思うが、よしのは密かに憧れていたTHE VOTTONESのライブに乱入した。引っ込み思案のよしのに若干効いているギラつきの賜物だった気がする。ステージの上で「どこかで見たことあると思ったら、riverside yoshinoくんじゃないか!」と言われ背筋がピンと凍ったのを覚えている。あとギターの音はずっと出ていなかった。

 ライブ後、フロント・マンのふーさんに声をかけてもらった。一方通行でよしのが好きなだけだと思っていたら、向こうもよしののことを知ってて嬉しかった。相変わらず下ナポをチビチビやりながらの数センテンス、「The Whoとか好きやろ?」と言われた。単に、その時たまたま来ていたのが通称「犬の匂いのするコート」、ドイツ軍流れのモッズ・コートだったから出た一言だったのかもしれないが、よしのとしてはボットンズのどんな曲よりも耳にこびりつく言葉だった。

 

 「ごっこ遊び」の悩みの中、よしのはふーさんの一言に引っ掛かりThe Whoのライブ映像をたくさん観た(断言するが洒落ではない)。The Isle of Wightも全部観た。恰好の、ごっこ遊びの餌食だと思った。今まで「ずっと3番目に好きなバンド」だったThe Whoは盲点だった。

 

 以下は完全に自惚れだが、よしのにはかなりの程度、Pete Townshendの素質があるんじゃないかと思う。アコースティックでもエレクトリックでも、結構なパワー・プレイが身上だし、リード・ギターというよりはリズム・ギター派だと思う(個人的に、ミランバーズもリード・ベースがいると言っても過言ではないバンドだ)。あとは、破天荒でありたいのになんとなく真面目にやってしまうところ(そしてそれがコンプレックスになっているところ)とか、ギターよりコーラスに自信がありそうなところもそうだ。そして何よりやりすぎなほど音がデカいところもか。ちなみによしのは、ここまで書いていて今猛烈に恥ずかしい。

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 今この時、よしのはThe Whoの最新アルバムを聴きながらこれを書いている。あの鼻の大きさと、身長、手足の長さ、そしてステージ・アクションの真似ができない故に、「ピート・タウンゼンドごっこ」をしている自覚は全くなかったが、知らず知らずのうちに、よしのは彼の背中を追いかけていたのかもしれない。勿論、名だたるブルースマンやここには書ききれないほどのロックンローラーのことも忘れずに・・・

 

 前もこういう話を書いて残している気がするが、一連の出来事から、よしのの中でのPeteの存在はとても大きくなっている。そもそも身長は大きいが。「ピート・タウンゼンドごっこ」の自覚が出てからというものの、よしのの一番好きな「ごっこ遊び」は俄然面白くなってきた。よしのはこれから「ピート・タウンゼンドごっこをやっています!」と胸を張って言うだろうし、影響を受けてきたギタリストを聞かれればあまり迷わずPete Townshendと言えるようになったのではないだろうか(勿論好きなギタリストはもっとたくさんいるが・・・)。完成形はまだはっきりしていないが、「ごっこ遊び」のど真ん中にPete Townshendが腕をグルグルさせながら飛び跳ねている姿が今ははっきり見えている。A Quick One(While He's Away)や5:15やBaba O'rileyのようなおもちゃが出来たらいいな。

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 ※そういえば、昨年はふーさんのもう片方のバンド、THE RICHESと対バンする機会があった。あのときのよしのはきちんと「ピート・タウンゼンドごっこ」できていただろうか。リッチーズの「おいしいば~い」(タイトルは不確か)と歌う曲がよしのは好きだ。「こんなはずじゃなかっただろ」の部分に、ありとあらゆるロックンロールの粋が詰まっている気がした。あと「弱い心に沁みるばい」のところも。何度も聴いたわけではないが、これだけ覚えている自分に驚きもする。その日は終演後にバー・カウンターで過去最悪を更新する泥酔に突入し、起きたら知らない公園で砂を食べていたことも、今となってはいい思い出である。