ちょうど10年前に亡くなったよしのの父は、立浪の背番号3のユニフォームを着て現地に観戦しに行っていた。
中日ドラゴンズの背番号3は高橋周平だ。生まれてからずっと立浪の背中を追い続けているよしのにとっても、中日ドラゴンズの背番号3は高橋周平だ。
周平が喜んでいる姿より、苦しんでいる姿を見ている時間のほうが長い。
よしのがふるさと長崎を出る前日の試合で、絶体絶命の中逆転グランドスラムを放った男。
ちょっと前まで高校生だったのに、よりにもよってよしのがテレビで観ている試合でプロ初ホームランを打った男。なのに、期待通りの活躍ができないと逆風を浴び続けている男。
今日だけで逆風を跳ね返せるわけじゃない。
それでも、よしのにとってドラゴンズの背番号3は高橋周平だ。